日本酒は、「お米を発酵させて造られる醸造酒」です。
発酵とは、酵母が糖分を食べてアルコールを出すこと。しかしお米には糖分はありませんから発酵しません。したがって日本酒は、まずお米を糖分に変え、そこに酵母を加えて発酵させるという、きわめて巧妙・複雑なしくみによって造られるのです。
製法にバリエーションはありますが、ここでは秋田流寒造り(低温長期醗酵法)の吟醸造り工程をご紹介いたします。
玄米は、蛋白質や脂肪分が含まれており、酒質に雑味を与えてしまいます。そのため、玄米の外側を削って余分な成分を取り除きます。吟醸酒では半分以上が削られ、一粒一粒が白く丸みを帯びてとても綺麗です。
削られて残った米には米糠が付いているので洗米をします。
米の芯に程よく吸水させ、“蒸し”に必要な水分を米粒に与えます。
米をたくさん削るほど吸水過多になりやすいので、目標の吸水率にすることは経験が必要です。
100℃以上の蒸気で、白米を約1時間蒸します。
米粒の表面は硬めで内部は軟らかく、程よい弾力性が求められます。
「釜屋」(蒸係)さんの腕の見せ所です。
蒸しあがった米は、掛米や麹米など用途によって目標温度まで冷却します。
適温にした蒸し米に種麹菌をふりかけ、真冬でも25~35℃に保温された麹室(こうじむろ)に取り込み、約2日間にわたり麹を育成します。
ここでの温度管理や作業はとても手間がかかりますが、酒の出来を左右する最も重要な工程の一つです。
蒸し米、水、麹を混ぜ、酵母菌を加え、発酵に必要な酵母菌を大量に純粋培養させます。これが無いと発酵が始まらない、文字通り「酒の母」といえます。
育成した酒母は麹や蒸し米と一緒になり、発酵が始まります。これが醪です。
一度に仕込むと酵母の増殖に影響が出るため、原料を添・仲・留と三段階に分けて仕込みます。この方法を段仕込み(三段仕込)といい、醪一本の段仕込みは4日間で完了します。
①[1日目・第一段階]初添(はつそえ)
酒母、掛麹、掛米(蒸し米そのもので、酒の味のベースとなる)と水で仕込まれます。
②[2日目]踊り
仕込みを一日休み、酵母を十分に活気付けます。
③[3日目・第二段階]仲添(なかそえ)
踊りの翌日、さらに掛麹、掛米、水を加えます。
④[4日目・第三段階]留添(とめそえ)
仲添の翌日、さらに掛麹、掛米、水を加え、1本の醪仕込みが完了です。
これから30日前後かけて少しずつお酒になっていきます。
発酵が終わった醪をしぼり、酒と酒粕に分離する工程を上槽といいます。
吟醸酒の上槽は酒の香味が逃げないように袋吊りという方法で行います。
袋の中に醪を入れ、一滴ずつ落ちてくる雫を集めるのです。
しぼり終えた新酒の出来ばえを確かめます。
この後、しばらくの間熟成され、酒質を安定させて出荷となります。